屋外で撮影 Vol.2
撮ってみる「基本編」

Vol.2では稚拙ながら実際に撮影してみるときに役立つ技術的なところを中心にまとめました。


■光線の向きを選ぶ

 順光と逆光ということばがあります。よく人物の写真を撮るときに、その人物の後ろ側に太陽がこないようにしますよね?人物を撮影するとして人物の後ろに太陽がある状態を「逆光」といい、人物が影になってしまいます。その逆にカメラの後ろに太陽が来る状態を「順光」といい、人物に光が当たります。

 じゃあ順光のほうがいいのか?というと、そうとも限らないのです。

 順光の場合はとうぜん人物の顔に光があたった状態なのですが、とくによく晴れた日の昼間などは光が当たった部分(頬やおでこなど)と光が当たってなくて影になってる部分(鼻の陰や首など)の明るさの差がとても大きくなります。つまりハッキリした顔だちになるわけですね。

 逆光の場合はどうかというと、全部が影になってるわけですから明るい部分と暗い部分の差はあまりなくて、やわらかい印象の顔になるわけです。

 このことから、たとえば男の子の写真や、女の子でもスポーツシーンや元気よく歩いているところなど、メリハリをつけた凛々しい雰囲気を出そうと思ったら順光が向いていますし、逆にたとえばお花畑でたわむれているところや静かにたたずむところなど、柔らかい雰囲気を出そうと思ったら逆光が向いていると思います。

 ただし逆光の場合は顔がもともと「影」になっているわけですから、普通の感覚で撮ると真っ暗になってしまいます。後で書きますけれど、シャッタースピードや絞りを調整して周囲は明るすぎるぐらいの設定にしたり、レフ板(Vol.1およびこの後の節を参照)を使って人物に光を当て明るくしてあげて撮影する必要があります。


 ただ、逆光の場合も順光の場合も「太陽がちょうど正面」「太陽がちょうど裏側」にしてしまうと、さすがにのぺ~っとした写真になってしまいますから、多少斜めに光が当たっている角度にできればきれいな写真が撮れますよ。まとめると、こんな感じですね。


順光

凛々しい、活発さ、元気さを出したいときに

逆光

かわいらしい、やわらかい雰囲気を出したいときに

■レフ板をつかってみる

レフ板について

 レフ板ってのは、銀色や白色、金色をしていて光を反射する板のことで、太陽などの光を反射させて照らしてあげるのに使います。

 たとえばよく晴れた昼間に逆光で写真を撮るとき、周囲を明るすぎるぐらいにして撮りましょうって書きましたけど、それだけだと頭のてっぺんとか、お陽さまが当たっているところがすごくギラギラしてしまい、風景が明るすぎて全然見えなくなってしまいます。こんなときに、レフ板を使います。太陽と反対側から影になっている顔などを照らしてあげることで、明るいところと暗いところの差を少なくしてやわらかい雰囲気を出し、全体として明るさを整えることで背景が明るすぎてしまうことを防止します。

 また例えば、曇の日や雨の日、あるいは夜に街灯の光だけで撮る場合に追加の明かりとしても使います。ストロボとちがっていろいろな方角から照らせますし、レフ板の表面がざらざらしていれば反射させた光はやわらかくなりますから、やわらかい光で照らせます。

 レフ板は市販のものが使いやすいですが、私が以前使っていたような、ボール紙とアルミ箔と白紙(レポート用紙の台紙に台所のアルミ泊とレポート用紙を貼っただけ)でもじゅうぶん使い物になります。市販品を買う場合、もともと相手が小さいものですから、いちばん小さなサイズのものでじゅうぶんです。


 タイトルに描いたジェニーのイラストですが、私の一般的な撮影の様子です。レフ板が作る光線の向きの微妙な変化でお人形の表情がずいぶん変わってしまいますから、カメラを三脚で固定したうえでレフ板を手で調整しながらシャッターを切るのです。

レフ板の使い方

 撮影する向きや太陽など光源の向きにもよりますが、暗い所を補完するのであれば、暗い所=下側を向いているところ、ですから、下から照らすようにしてあげると良い具合になります。まさにタイトルのイラストのような具合です。


 ただ、なんでもかんでも光を当てれば良いか?というとそうではありません。ときにはレフ板を使わずに自然に任せたほうが良い場合もあるし、強く当てたほうが良い場合もあります。

レフ板を使わない

 例えば上の写真では、逆光ですがレフ板を使っていません。よく晴れて、私の背中側(たしか国道と斜面?)からの反射光など自然光だけでじゅうぶんに明るく自然な写真が撮れると考えたからだった・・と思います。使う必要が無いなら使わずに自然に任せたほうが良いに決まってます。この写真では頭の上の明るい所が完全に白く飛んでいますが、全体としてみれば自然だと思います。

レフ板を使った失敗

 いっぽうこの写真も逆光(画面左側やや後ろから当たっている)で、レフ板を使っていますが、今見てみるとレフ板であてた光線が強すぎてかなり不自然です。お人形の首や左手側に垂れ下がった髪に明るい部分がありますが、太陽の向きからして明らかにおかしいですし(苦笑)。


 参考に、レフ板を使った写真を2枚続けます。

 こちらの写真は北海道の羅臼で撮ったものですが、お人形のやや右手側やや斜め下からレフ板で光線を当てています。太陽光が真横から 当たっており、自然のままだと顔の右側がかなり強い影になっていたのだと思います(首元にちょっと反射してしまいましたが・・)。

 いっぽうこちらも北海道で、幸福駅です。たしかお昼頃ですがかなり雲が厚く、順光ですが、自然のままでは顔が前髪の影となってかなり暗いのです。そこでレフ板を写真に写らないギリギリまで近付けてかなり強く照らしていたと思います(それでもこの程度でしたが)。


 デジカメを使えば、その場で「具合」を確かめることができますから、レフ板を使ったり使わなかったり、向きを変えて何パターンか撮ってみても良いかと思います。

■絞りとシャッタースピードを選ぶ

基本的なお話

 ここはちょっと小難しい話ですが、知っていると知らないとでかなり違いますから、読んでみてください。デジカメでもいっしょです。


 「絞り」っていうのはレンズに入る光の量を調整する部分のこと。最近のカメラで絞りの調節機構がついてるものは、ほとんどが光が通る丸い孔の大きさを大きくしたり小さくしたりすることで調整しています。つまりうんと絞った時にはレンズの真ん中だけを通った光がフィルムに当たるようになってるわけ。

 それだけ聞くと、ああ、入る光の量を調整して明るさを調整するのか、と思いますが、半分正解。明るさを調整するだけなら丸い孔じゃなくても、たとえば猫ちゃんの目みたいに細いスリットのようにしてもいいのだけど、わざわざ複雑なしかけで丸くしてるのは、この「レンズの全体を使うか」「レンズの中心だけを使うか」が大事なポイントだから。

 どういうことか?というと、レンズ全体を使った場合(絞りを開ける)はピントが合う範囲が狭くなって、レンズの中心だけを使う場合(絞りを絞る)はピントの合う範囲が広くなるのです。

絞りを「開けた」場合

・明るい写真が撮れます
・ピント合わせはシビアです
・背景をボカして立体的な写真が撮れます

 レンズの「f○○」と書いてある数字を小さいほうに動かし絞りを「開けて」みると、人間の目の瞳孔に相当する部分が大きくなります。このとき、実際にピントを合わせた位置のほんの少しの範囲だけでピントが合い、それ以外の場所はボヤけます。ピントを合わせるのに慎重さが必要ですが、風景をわざとボヤかして立体的な写真を撮ることができます。

絞りを「絞った」場合

・写真は暗くなります。シャッタースピードを遅くしないといけません
・ピント合わせは神経質にならなくて良いです
・背景も比較的はっきり写ります

 レンズの「f○○」と書いてある数字を大きいほうに動かし絞りを「絞って」みると、人間の目の瞳孔に相当する部分が小さくなります。このとき、実際にピントを合わせた位置から多少前後しても、みかけ上ピントが合っているように見えます。お人形も風景も両方ともはっきりと写したいときに使います。ピントあわせに神経質にならなくてもキレイに写せますが、光が入る量が少ないので、シャッタースピードを遅くする必要があり、手の震えなどでブレることがあります。

 なんでそうなるのか?について見てみたいヒトは下をクリックして読んでね。読まなくても写真はちゃんと撮れるけどね。

「絞りとピントについて」を読む

 あと、スマートフォンのカメラではレンズが小さく薄すぎて、今のところ絞り機構は(アプリで疑似的に作り出すのは別として)難しいようです。

背景をくっきり写す、背景をわざとボカす

 これは専門用語で「被写界深度」と言います。これを応用して、お人形のバックをボカしたりクッキリさせたりといった効果を出すことができます。

f=22

 この写真を見てください。風景もちゃんと写したかったんです。お人形にピントを合わせてるんですけど、風景もそこそこちゃんと見えますよね?これは絞りをうんと絞って撮りました。

f=22

 こちらではどうでしょう?こっちの写真は逆で、お人形をクッキリ、風景はぼんやりさせて、お人形が浮き出ているように見せたかったんです。絞りをうんと開けています。(ちなみに両方の写真とも、特殊効果を出すフィルターを装着して撮影しています)

 こんなふうに、「絞り」の調節でちょっと面白い写真が撮れます。普及型のコンパクトデジカメでも操作メニューから「絞り」という項目があれば、それをいろいろ変えて撮影してみてください。ちょっと面白い効果が出ると思います。人間の目だって本来はこれと同じなんだけど、無意識にピントを合わせてしまうから気がつかないだけなのです(持論ですが、夜に交通事故が多いのは人間の目の絞りが開いて被写界深度が浅くなり、遠方の風景が見づらくなるからではと思います)。

シャッタースピードについて

 ただ、上で書いたような絞りを絞ったり開けたりする時には、気をつけなければならないのが明るすぎたり暗すぎたりしてしまうことです。絞りをうんと絞った状態とうんと開けた場合は、光の入る量が何十倍も違います。ここで調整が必要なのがシャッタースピードです。

 フィルム(デジカメやスマホのイメージセンサーでもいっしょです)っていうのは長く光に当てればそれだけ光をため込む時間が長くなるから、たとえばシャッタースピードが1/10秒というのは1/1000秒のときと比べて100倍も光をため込む時間が長いことになります。

 つまり、絞りを絞ったときにはシャッタースピードを遅くする必要があるし、逆に絞りを開けたときにはシャッタースピードを速くする必要があります。これをやらないと、妙に暗い写真になったり、逆に明るすぎてピンクや水色のお洋服が真っ白になっちゃったりするわけです。

 このへん、「露光計」とか「露出計」とかっていう、その場所の「明るさ」を計る道具があったりカメラにその機能がついていればいいのですが、なかったら自分のカメラでたくさん写真を撮ってみて「どのくらいの明るさのときにどのくらい絞ったらどのくらいのシャッタースピードにすればいいか?」を覚えるしかないです。要は自分のカメラでたくさん写真を撮ってみることですね。

■広角レンズ、標準レンズ、望遠レンズを使い分ける

 カメラや望遠鏡のレンズには「○○mm」という表示がありますね。これは焦点距離と言って、フィルムやセンサの大きさが同じならばこの数値が大きいほど高倍率になります。一般的に、人間の見た目に近い大きさで撮影できるレンズを「標準レンズ」と言いまして(但し「標準レンズ」の定義はメーカーによってまちまちです)、標準より倍率が低く広い範囲を撮影できるものを「広角レンズ」、標準より倍率が高く狭い範囲を撮影できるものを「望遠レンズ」と呼びます(但しこの定義もまたまちまちですが・・)。

 デジカメならば中立の位置が標準で、ズームを効かせたら望遠、です。

 先ず、下の写真を見てください。近場の公園で、OM-1で標準レンズとされている50mmレンズを使って撮影したものです。お人形からは50cmほど離れています。

50mm


 こんどは下の写真を見てください。レンズを28mmの「広角」レンズに変えまして、お人形の位置は変えずに、さきほどの50mmのときと同じ大きさに写るようにカメラをお人形に近付けて撮影しました。ですからカメラからお人形までは30cmほどまで近づいています。

28mm

 両者を比較すると、見え方が随分違っていると思いますが、おわかりでしょうか?

背景の大きさとの関係

 上の写真では樹木が大きく写っているのに対して下の写真では小さくなっています。このことは先ず、その写真の「主題」つまり何を目的とした写真なのか?の感じ方が変わってきます。

 上の写真では、背景の樹木は拡大されて写っており、たんなる「緑」として見えます。対して下の写真ではもうすこし広い範囲を写していて、樹木の全体像が見えます。つまり上の写真では「人物のみが主役」、下の写真では「人物と風景の両方が主役」になるわけです。もちろん絞りによって背景をボカしたりハッキリさせたりすることでも変わります。

 つまり、お人形自体のポートレートなのか?風景も入れた写真なのか?さらには風景が主役でお人形はあくまで脇役なのか?・・で、標準で行くか?広角で行くか?或いは望遠で行くか?を切り替えるというのがひとつ。


 もうひとつは、仮に写真の背景が、お人形と大きさを比較できる人工物、例えば自動車や建物だったとしたらどうでしょう?標準レンズに比べ広角レンズでは背景が相対的に小さく写りますから、背景の自動車や建物も小さくなります。つまりお人形をより大きく見せる効果があります。私の写真では、背後に人工物がある場合にはほとんどのケースで広角レンズを使っています。

お人形の表情

 上の写真のようにみかけ上同じ大きさで撮影しようとしたとき、広角では接近する必要があり、望遠では離れる必要があります(普通に人間や自動車なんかを撮影するときもいっしょですよね)。

 極論すると、遠く離れて超望遠で撮影したなら、お人形をコピー機で複写したように各部分の大きさの割合が正確なものとして写ります。対してお人形にもし1cmまで近づいたらどうでしょう?バストのドアップの向こうに、上を向いた顔と、細く小さな脚が見えるいびつな写真になるでしょう。

 このように、望遠では忠実に、広角では少し間のびした様子の写真になります。上の写真では標準レンズに対して広角レンズの写真では顔が少し上を向き、脚が細く小さくなっている様子がわかるでしょう。


 さらに、次の写真を見てください。

50mmと28mmの表情の比較

 先に触れたようにお人形の顔の向きが少し変わっていますが、眼、鼻、口、眉毛の位置関係と眉毛の傾きが、ほんの僅かに変化しています(画像加工ソフトで拡大して半透明にして重ねてみるとわかります)。これによって、標準レンズのときに比べ広角レンズのときは柔らかい表情になっているように見えます。


 つまり手足がスラっと伸びてシャープな表情をしたモデルさんのような写真が撮りたければ標準レンズや望遠レンズで撮り、柔らかい表情でちょっと幼い雰囲気の女の子を撮りたければ広角レンズで撮る・・という使い分けが考えられます。


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