屋外で撮影 Vol.3
撮ってみる「応用編」

 Vol.3では、経験から覚えた小ワザ、小ネタについて触れてみます。


■カメラの高さ

 本物の人物で例えば友人の記念写真を撮るときに、カメラをどの高さに構えますか?なにげなく自分も立ったまま顔の高さで構えて撮っていませんか?

 お人形でも実際の人間でもかならず、カメラから近いものは大きく遠いものは小さく写ります。つまり仮に目線の高さにカメラを構えて人物を撮ると、顔が大きく脚が短いように写ります。意識してそうするなら別として、カッコよく写そうとするならカメラを下げて、実際の人物を撮るならば膝をついてしゃがんで撮ると良いですよ。

 まとめると、お人形の身体はタテに長いですから、全身を均等に撮影しようとするならお人形の腰の高さにカメラを構えて撮ることが基本です。

①基本:腰の高さから撮る

 前記したように、身体の中心付近、腰の高さで撮るときがいちばんバランスがとれた写真になります。

 これらの写真では腰の位置に水平線や地平線があり、カメラをお人形の腰の高さに構えているのがわかると思います。このとき腰を中心に上半身と下半身が同じ角度で写っていますから、お人形の全身を均等に写していることになります。これが基本ですが、写真としてあまり面白みは無いかもしれません。

②目線の高さから撮った例

 この場合、図を見てもらえばわかると思いますが、カメラから頭が近く脚が遠くつまり頭でっかちに写ります。実際の人間を写す時、立ったまま顔の前でカメラを構えるとこの角度になるのです。

 頭でっかちな写真になりますので決してカッコ良くはありませんが、その反面、(私の主観ですが)可愛らしく写るように思います。お人形をカメラ目線にするならば、首をやや上を向かせるか上目づかいに見上げるような角度になるからかもしれません。私の写真では(自分でも意識していなかったのですが)改めて見ると、座りポーズでこのカメラ位置が多くなっていますし、立ちポーズでは腰より上の胸の高さで撮っている例が多いようです。

③足元から見上げるように撮った例

 この角度では脚がスラっと長く写ります。カッコ良い、クールな雰囲気の写真を撮ろうとしたときに向いています。ファッションモデルさんの写真ではこの撮り方が多いと思います。

 左の写真のようにカメラ目線にするとお人形はこちらを見下ろす姿勢になるほか、角度からして空や立ち木が写りますので、右の写真のようにお人形が風景を楽しんでいるような写真を撮ることができます。

 尤も、三脚を使わずにお人形を地面に直接立たせた上でしかも脚元の高さで撮影しようとすると、必然的に地面に寝転がって、カメラを構える顔や手を地面に密着させて撮ることになりますので、自分の服や顔など泥だらけになること必至です(笑)

■お人形の高さ

 カメラの高さに対して、今度はお人形の地面からの高さの話です。先ず、下の写真を見てください。

 なんとなく・・・自然っぽい気もしますが、路上駐車の車(セフィーロ?)と比べ微妙に違和感が。お人形の目線や顔はふつうの人間の目の高さとだいたい合ってますよね?でも・・・お人形は自動車よりも前に立っていますが、お人形のスカートの裾が路上駐車の車のボンネットの高さぐらいありそうです。

 このときのお人形の高さはこんな位置関係です。顔の位置は実際の女の子が立った高さと合っていてカメラからの見え方も自然ですが、下半身の高さはどうしても高く見えます。また、写真ではレンガ敷きの歩道が写っていますが、敷いてあるレンガが脚に対してとても小さく写っており、距離があることがわかります。つまりスカートから伸びた足が1メートルぐらいの長さがあるか、空中に浮いているように見えます。


 こんどはこっちの写真も見てください。実際の人間が立っているように自然に見えますよね?

 どうしてでしょうか?上の写真の場合は自動車歩道の敷石という見なれた大きさを比較できるものがあって、その両方の距離感からそれらと対比しやすいからです。

 逆に下の写真では、蔵やブロック塀の大きさは誰でもなんとなく知っているものの一律では無いものです。塀の下から3段目のブロックとお人形の足元の高さが同じくらいに見えますが、その高さはどのくらいかわかりません。また足元はアスファルトでしかも濡れているために距離感がつかみづらく、結果的にお人形の高さや大きさがわかりにくく本物の人間のように見えます。

 こんなふうに、お人形の全身を撮るような場合、特にすぐ近くに見なれた人工的なものなど「大きさのわかるもの」がある場合には注意が必要になります。上のクルマと並んでいる写真のような場合には、もうちょっと低いほうがよさそうですね。

 また逆に、地面に直接置いて周囲の草に隠れるぐらいにして、まるで妖精さんみたいに、かわいい写真を撮るっていうのもアリです。


 例えばこんなふう・・(職場の部内旅行に連れていきました)


 すみません、ちょっとふざけすぎました。食器で遊んではいけませんね!!

(個人的には、すっごくいきいきしてて、お気に入りの写真なんですが・・)


 いずれにしても「中途半端な大きさ」に見えないようにすることです。妖精さんのようなかわいい写真を撮るならあえて大きさのわかるものをすぐ近くに並べるのもいいんですけど、記念写真みたいなものや、お人形がほんとうの人間みたいにしている写真を撮るなら、その「高さ」に気をつける必要があるということなんです。

 特に人工的なものをバックにして写真撮るときは難しいです。人工的なものってたいてい直線でできてますから、どこかを延長した線が簡単にわかるので、お人形の位置と合ってるか合ってないか?がすぐにわかっちゃいます。

■お人形の目線

 こんどはお人形側の目線の話です。お人形にカメラを向かせても良いですし、明後日の方向を向かせても、それはそれで面白い写真になります。特に横や後ろを向いている写真では一種の「物語性」が感じられて、風景とあわせて情緒ある写真ができます。

①基本:カメラ目線

 この写真はオーソドックスにカメラ目線ですが、お人形の腰を首をいっぱいまで曲げて(つまり反らせて)、かつカメラをほとんど上から見下ろすように構えて、絵を斜めに写しています。グラビアアイドルさんの写真集なんかで、こうした撮り方ってありますよね。

②横を向かせる

 こうした、横や後ろを向いている写真で雰囲気を出すテクニックは、人物の目線の方向に空間をつくることです。景勝など何かを特別に見つめていなかったとしても、目線の方向に「何も無い空間」を作りその先に目を向けていることで、「何かを見ているのだな」というシナリオを自然と思い浮かべるものです。

 例えば上のドレスの写真では、お人形の顔だけ右(お人形の左)を向かせたうえで、お人形を敢えて絵の極端な左端に置いています。右側の空いた空間に映画のタイトルでも出てきそうな雰囲気ですが、こうすることで目線の先に何かが存在するように思われ、右側の「何か」と左側のお人形とでバランスの良い絵になるのです。

③後ろを向かせる

 こちらは、先の大震災で荒れ果ててしまう前の陸前高田松原の海岸です。何かを思いながら砂浜をひとり歩いている・・・といった雰囲気を狙っていますが、雰囲気出ているでしょうか?

 いっぽうこちらは、北海道の日本海オロロンラインの一部、道道106号線です。海岸線に沿ってひたすら真っ直ぐに続く道です。

 上記で、私は意識せずに撮影した風景の説明をしていました。このように、後ろを向いた写真では風景が主役になります。お人形ではなく、その風景を記録に残したいとした上で、「その一部」として人物を置くような場合に後ろを向いた姿勢を用いるということです。


 経験上、ケースから出して相応のポーズをとらせただけの、明後日の方向を向いたお人形が、自然で案外良かったりしますよ。

■夜間・暗い所での撮影

 夜は当然真っ暗ですから、お人形を撮るためには何らかの「光」を当てる必要があります。普通はストロボを使うと思いますが、上手く使わないと失敗します・・・と言うか、かなり難しいです。

普通のストロボの使い方の場合(オススメしません)

 カメラ内蔵のストロボや、カメラにストロボを取り付けてシャッター同期させて撮る方法です。一般的にはこの方法と思いますが・・・

 上記の例ではストロボの光量をかなり弱くして撮影しましたが、人間を撮影する場合に比べ距離がとても近いうえに、お人形は樹脂でできているため腕や脚など光が当たった部分だけがテカテカと光ってしまい、かなり不自然です。

 カメラ本体内蔵のストロボ使用は、お人形撮影の場合お勧めしません。

カメラと別にストロボを用意した場合

 少し工夫した方法でストロボを使います。このとき、カメラ本体内蔵のストロボではNGで外付けできる別売りのストロボを 用意したうえで、カメラ本体もバルブ(シャッター解放=シャッターを開けっぱなしにする)機能が必要です。

 手順はこうです。カメラとは別にストロボを手持ちします。バルブで20秒~90秒程のシャッター開放で撮影し、その最中に少し離れたところからストロボのテスト発光機能を使って、上下左右に数回に分け弱く発光させて照らします。

 作例です。ストロボのテスト発光を繰り返すため撮影に数十秒かかることから、シャッタースピードをバルブ(開けっ放し)にし、それでも光を溜めすぎないように絞りをf22まで極端に絞っています。その上で、3mほど離れた左右から手でストロボを2回テスト発光させて撮影しました。

 夜の撮影では照明が当たっている所と影の所で、明るさに極端に差が出ます。それでは不自然ですから、ストロボを、例えば右上と左下から分けて発光させることで、お人形全体に光が当たるように、しかし多少は明暗(影)を出して立体感を出すように、上手く調整してあげます。

ストロボ以外の光源の利用

 街灯や懐中電灯、広告灯など、明るいものが近くにあればとりあえず光源として利用できますが、明るさと色温度(光の「色」)には注意する必要があります。

 例えばこの写真ではお人形に豆電球の懐中電灯を照らして撮影しています。豆電球は家庭の白熱電球と同じで、フィラメントを高温にして発光させるのですが、赤っぽい光を放ちます。人間の目と頭は都合よく調整しますから色をあまり感じませんが、写真に撮るとこのように赤っぽい色になってしまいました。

真っ暗な場所での撮影のために

 真っ暗な場所で撮影するのですから、お人形を立ててピントを合わせようとカメラを向けると・・・ファインダーを覗いてもモニター画面を観ても、真っ暗です(笑)。デジカメやスマホのオートフォーカス機能も上手く働かないと思います。ピントだけでなく、お人形の目線をカメラに合わせるにも真っ暗では無理です。ですから懐中電灯を用意し、できれば針金などで三脚に固定して手放しでお人形を照らしておけるようにすると良いです。


 それからマニュアル撮影で照度計を使う場合も、オートマチック撮影でカメラが照度測定をするにも、暗すぎて測定が困難です。離れたところからストロボで照らす場合の明るさの予測も困難です。こればっかりは「経験をもとに」「いくつか設定を変えてやってみて」上手くいったらオメデトウ・・・というしかありません。

 例えば下の写真ではストロボの光が強すぎます。たしかに顔などはキレイに撮れているのですが、周囲がガス燈と宿の灯りでぼんやりしているのに、人物だけハッキリ写っておりまるで合成写真のようです。

 この場合はもっと明るさを落として(ストロボをもっと離す、布を被せるなど)撮ったほうが良いようです。

■黄金分割とその破壊

 黄金分割というのは、1:(1+√5)/2の値で、約1:1.618、5:8。この比率で作った図形はいちばん美しく見えると言われています。

 写真の中でお人形がどの位置になるようにするか?は、けっこう難しいものですが、それを簡単に解決するのが「黄金分割」ってわけです。 立っていたり座っていたりするポーズだと思うから、写真の中でお人形が、横幅に対して1:1.618に切るような位置に立っていればいちばんキレイに見えるってわけです。

 じゃあタテ方向にはどうすればいいか?というと、絵の中心、普通は顔の中心、目の中心が1:1.618の位置になるようにすればキレイに決まります。

 といっても、それだと「いかにも」っていう写真になっちゃいます。たしかにキレイなんだけど、なんか妙にキマリすぎていておもしろくない。こういうときには黄金分割をワザと破壊するってのもアリです。

 例えば写真のど真ん中にワザと置いてみる、例えば写真のはじっこにワザと置いてみる、ということをしてみます。とっても不安定な、バランスの悪い写真になります。そういう写真はキレイではないかもしれないけど「おもしろい」こともあるんです。ただこれはその場の雰囲気によって変わるので、どういうふうに撮ったらどう見えるか?は無限にありますから、ご自分でいろいろ挑戦してみてくださいね。

■小道具の利用

 このへんは世の中にいくらでもあるので簡単には言えないけれど、小道具を使って雰囲気を盛り上げるってのもありますね。

 いちばん手っ取り早いのは「椅子」です。¥100ショップの園芸コーナーや室内装飾コーナーで売られているものがサイズ的にけっこう合います。あとはプラモデルとか、食玩として売られている駅弁のミニチュアなどです。このへん、「こんなものを使ったら面白かったよ」というものがあったら、教えてほしいのですけど・・・


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