屋外で撮影 Vol.1
準備

屋外でお人形の写真を撮るときに、いろいろ気がついたことをまとめてみました。Vol.1では、前提となる考え方や必要な道具について紹介します。


■お人形の撮影について

 そもそも論としての考え方やマナーの話をまとめました。

◇人目に付く場所でのお人形撮影ってどう見られるか?

 最初にぶつかるのがこの疑問だと思います。「気持ち悪がられないか?」「変な目で見られないか?」「見た目そのものが迷惑にならないか?」というもの。

 そういう方もいらっしゃるかもしれませんが、20年来の経験上、だからといって排除されたようなことは一度もありません。周辺の人々で最もリベラルな方と言うと例えばお孫さんを連れたお爺ちゃんお祖母ちゃんだと思いますが、聞かれる声は「〇〇ちゃん見てごらん!リカちゃん人形の写真撮ってるよ!」とか「あら!可愛らしい!」というもので、拒絶されるような反応はいちどもありませんでした。だいたい若い方はスルー、ご年配の方は「どんなふうに撮れるのですか?」とご興味示されることが多く、安心して良いと思います。ただもちろん、周囲に迷惑をかけないことが大前提です。下記に続きます。

◇撮影やWeb掲載には施設の許可が要るか?

 これはずばり、場所によっては許可が必要な場合や、禁止されている場合があります。山の中や公園の中ならともかく(それでも狭い登山道や花の名所などでは、通行の邪魔や長時間の場所の占領をしないことが前提)、遊園地や博物館、庭園など管理された施設の場合は事前に確認してください。写真の商業利用でない限り申請不要でどうぞご自由に、とされる場合が殆どですが、混雑するので三脚禁止という場合もあります。

 最近(2022年)は、コスプレした人がインスタ映えスポットで写真撮影する趣向が増え、彼らが大人数で場所を占領してしまいトラブルになるケースが増えてて、庭園やお屋敷など見栄えのする施設を持つ観光施設は少し敏感になっています。特に管理者が常駐しているような施設(それだけ管理が繊細だということ)の場合、お人形を置いて写真を撮ること、それをインターネットで掲載すること、撮影は邪魔にならないように心がけること、を事前に管理者や受付窓口に問い合わせておくか施設のWebサイト等で確認しておくことが望ましいです。

◇お人形撮影は邪魔にならないか?

 経験上、観光客のど真ん中で撮ってたら当たり前ですが「すごく邪魔」です。人間と違ってさっとポーズをとって撮影するわけにいきませんから、その場所を5分ぐらい占領することになるからです。なので「記念写真撮影用に施設が用意した場所」などは避けるべきです。少し横に退けるとか、全く別の撮影スポットを独自に発見するなどしてください。この「穴場探し」がまた楽しいものです。皆さんが記念写真撮ってる場所を数メートル離れて違う角度から撮ると却って面白いことがあります。

 参考までに、「Portraits-4 美ヶ原・乗鞍」で、美ヶ原高原美術館で「愛のモニュメント」前で2枚写真を撮っています。ここは絶好の「映えスポット」で、記念写真撮りたい人が数人並んでるほど。そこで、並んでるうちにお人形を三脚に固定してポーズを作っておき、自分(カメラ)とジェニーと背景の彫像との位置関係を目検討でシミュレーションした上で、自分の番が来たらそれを置いてレフ板は諦めカメラを手持ちでサッと撮影。なので1枚の写真に要した時間は15秒ほどで、他の方の撮影時間とほぼいっしょでした。これを再度並び直して2枚の写真を撮りましたので、2枚目の写真がばっちりカメラ目線にできたのは奇跡的でした。

 三脚立てて撮影したり、これは生身の人間でもそうですがモデルさんの髪やポーズや衣装を整えながら撮影するのは、とても時間がかかります。その間、場所を占領することになります。気遣いをお願いします。

■お人形の持ち運び

 壊れやすいお人形をどうやって持ち運ぶか?なかなかちょうど良い入れ物は見つからないものです。

MD用ケース

 しかしながらスーパーアクションジェニー(身長29cm)の場合は写真の、ダイソーで売られていたMD用収納ケースがあまりにピッタリ!私の場合は緩衝材としてハンドタオルを上下に入れて本体を保護しています。

 ちなみにこのケースは2001年に札幌のダイソーで買ったもので、接合部がだいぶくたびれています。2022年時点で同サイズのものが(留め具がだいぶチャチになったものの)売られていますので、もしお手元のお人形が1/6サイズでしたら検討されては如何でしょうか。

■カメラの準備

 昔ながらのフィルムカメラでも、普及したデジタルカメラでも、できればファインダーがついていて確認しながら撮れるものが良いですね。

 普通は想定してないようなものすごく近い距離で撮影することになるから、ピントが合いづらかったり、狙ってない所に合ってしまったりします。ところが液晶画面だけのデジカメやスマートフォンだと晴れた青空の下など明るいところでは見づらくて、後で見直したらピンボケだった・・・になりがちです。

※尤も、最近のものはオートフォーカスが優秀で高感度・シャッタースピードも速いので、フルオートでもきれいに撮れますが。

 ですからファインダーを備えて、ピント合わせができる機種がふさわしいです。そういった機種であれば(お人形だけを撮ろうとした場合)安い機種で十分です。高性能カメラが持っているような機能は、お人形撮影の場合ほとんど使いません。1眼レフの下位機種の中古だったら1万円ぐらいからあるようです。


 普及型のコンパクトなデジタルカメラを選ぶなら、炎天下でも液晶画面が見やすい、セルフタイマーやリモコンなど本体に触れずにシャッターが切れる、マクロ撮影機能がある、を基準にすると良いと思います。

 最近のスマートフォンでも十分綺麗に撮れますが、スマホはVol2で説明する「絞り」の調整で背景をボカしたりクッキリさせることが苦手です。スマホでは最初からそうした写真は諦めて、逆に携帯性を活かしていろんな角度から何枚も撮ってみて良いものを選ぶなど撮り方使い方を工夫すれば良いでしょう。最近はスマートフォンを挟んでカメラ用の三脚に取り付けることのできるツールも売っています。



 カメラ本体の選定は後記のレンズと関係してきます。特に中古で購入する場合には、レンズがたくさん出回っている機種を選ぶのが無難でしょう。

 私が使っているのは、まあお人形撮影用というよりカメラそのものの趣味という具合で、かなり古いものです。

オリンパスOM-1

OLYMPUS OM1

使用レンズ

  • ズイコー50mmマクロ F3.5
  • ズイコー28mm広角 F2.8
  • ズイコー50mm F1.4
  • タムロン50~200mmズーム

  •  オリンパスのOM-1という1972年登場のカメラです。骨董品の部類に入る古いカメラですがちゃんと写ります(普段の家族旅行などでも使っています)。これのいいところは完全機械式なので電池が無くても写せるところと、ショックアブソーバーが内蔵されていてシャッター衝撃が静かなところですね。よくある「パシャッ!」じゃなくて「シャコーン!」という音がします。

    マミヤ645 1000s

    Mamiya645 1000s

    使用レンズ

  • セコールマクロC80mm F4
  • セコールC45mm広角 F2.8

  •  普通の人は買わないと思いますし、ましてやこれでお人形撮ってる人は私以外居ないと思いますが、マミヤオーピー(旧マミヤ光機、カメラ製造からは撤退しています)の1976年の製品です。中版という大き目のフィルムを使うカメラで、使うフィルムは普通「カメラのフィルム」と言ったら思い浮かべる35mmフィルムの倍ほどの面積があるので、それだけ繊細な写真が撮れます。フィルムは35mmのように金属の缶に入っているのではなく「巻いてあるだけ」で、これを装填する作業が複雑なところが趣味っぽくて良いです。

    ■レンズ

     ある意味、カメラ本体より重要かも。レンズはまあいろいろあるに越したことは無いですが、(35mmフィルムカメラの場合)焦点距離50mm付近のものがあればとりあえずはOK。欲を言えば28mmとかで景色を入れて風景写真ふうに撮影し、50mmなどで上半身のアップを撮影します。ちなみにこのサイトの写真は多くを28mm広角で撮影しています。

     モデルさんの写真集とかでぐいっと迫ったような写真を見かけますよね?お人形でこういった場面を撮影したいなら「マクロレンズ」というものがあると便利です。花や昆虫の写真撮影などでよく使われます。一般的に、最短撮影距離(どれだけ被写体に近寄ってピントが合うか?)も短いものが多いです。最近のデジカメの標準レンズやスマートフォンでは最初からマクロと言って良いほど接写ができるものもあります。

     レンズの選定基準として「焦点距離(○○mmとかで記載。長いほど倍率が大きいが暗くなる)」「明るさ(F○○で記載。値が小さいほど明るく写る)」などがあるけれど、お人形のような小さなものを撮影する場合には上記に加え、前述の「最短撮影距離」が重要です。かなり近寄って撮影することになるからです。新品レンズならカタログに書いてあるけど、中古レンズの場合は調べないとわかんないです。店員も全部はしらないと思いますから、カメラを持っていって、実際に装着してみてチェックするのが良いでしょう。このあたりの選定やテクニックはカメラ雑誌等の「花の写真」の特集を読んでみると参考になります。

    ■ストロボ/フラッシュ

     ほとんど使いません。スタジオのような場所でカメラと別にスタンドに立てて使うのならともかく、カメラに据え付けて使う場合には近すぎてしまうし、なんとも白々しい、如何にも樹脂でできてますっ!、っていう硬い感じの写真になっちゃうからです。布とかをかぶせて弱くすることもできるけど、そうすると背景(例えば部屋の中など)に光が届かなくなってしまう上に、お人形の「影」が大きく写ってしまいます。

     但し、夜景と共に撮影するときに少し工夫した方法でストロボを使います。詳しくはVol3.「応用編」で説明します。

    ■フィルム(フィルムカメラの場合)

     これは好きずきがあるから一概には言えませんが、昼間屋外で撮影するならASA100のもので十分です。一般的に、感度の低いフィルムほど粒子が細かく鮮明な写真が撮れます。ただし暗くなってしまうので、シャッター速度を遅くする必要があり手ブレが起きやすくなります。三脚と併用すると良いと思います。

     昔はコダックの「PORTRA160」や富士フィルムの「REARA ACE」をすき好んで使ってましたが、現在(2022年12月)コンビニなどでは写真フィルムは全滅。かつ世界情勢の影響もあり〇〇カメラとかカメラの〇〇のような大手のお店ですら「入荷待ち」になってしまいました。

     話を戻しまして、撮影条件をしっかり設定できる自信あれば、ポジフィルム(またはリバーサルフィルム:スライドに使える、白黒反転しないフィルム)のほうが特に暗い部分などでよりきれいな色彩表現ができますから、使う価値があると思います。よく晴れた日の木陰など明暗がクッキリするような所や、逆に夕方など薄ぼんやりした風景ではリバーサルフィルムが威力を発揮します(但しシャッタースピードの選定などが極めて難しい)。

     リバーサルフィルムはかつては現像チェーン店でも売っていたのですが、最近では大型カメラ店に行くか通販でしか変えず、しかも富士フィルムの「ベルビア100」「プロビア100」しか見なくなってしまいました。ただこのフィルムは35mmでもかなり高精細で色もよく、現在のところ私のお気に入りです(と言うか他に選択肢が無い)。

    ■割り箸、φ3mm程のアルミ針金など

     これはお人形を「立たせる」のに使用します。私は初期には割り箸を用いていましたが、現在はホームセンターで売っている太めのアルミ針金を用いています。脚を曲げてもそこに上手く隠れるように曲げることができるのと、90度に曲げて地面に置くとか、金具に固定して三脚に固定するなど使い道が広がるためです。

    地面に自立させる

     基本的な使い方。アルミ針金を20cmほどの長さに用意して、お人形の腰に挿して地面に挿して自立させます。土とか、雪とかだと概ねこの方法です。


    固い地面の場合

     アスファルトや石には挿さらないので、針金を折り曲げて恐竜のしっぽのようにして立たせます。このとき後ろに伸びた針金が写真に写りこまないように向きを調整します。

     例えばこの写真では実はお人形の背後に針金が2本あります。片方(お人形の右足に固定)は靴の付近から90度後ろに曲がっていて、もう片方(左足に固定)は腿のあたりから斜めに後ろに伸びていますが針金の影が右足の影に重なるようにしてカモフラージュし、2本使うことで風で倒れないようにしています。


    ■三脚

     これはカメラを固定するのではなく、お人形を固定するためにまず必要です。というのも、例えば地面に直接置いたら目線がとても低くなってしまい如何にも人形という感じになってしまいますし、場合によっては周囲の雑草などに景色が隠れちゃうからです(最初からそれを狙って撮るなら別です)。とはいうものの、人間の目線の高さまで持ち上げるとこんどは下半身の高さが不自然になります。したがって50cm~80cm程度の高さで撮影するのがよく、三脚もこの程度の高さまで伸ばせるものが良いです。

     三脚にもいろいろありますが、カメラと違ってシャッターを押したりなど衝撃がかかるわけではありませんので、携帯用のもので十分です。

     これとは別に、マクロレンズで接近した写真を撮る場合や、夕暮れ時や夜間、屋内などでシャッタースピードを遅くして撮影する場合にはカメラ固定用の三脚が必要になります(これも根性で手振れを起こさない自信がある方は別ですが・・)。例えば私の場合は、お人形を立たせるための携帯用の三脚と、カメラを固定するための大き目の三脚を両方持ち歩いています。

     一脚はお人形撮影では使いません。お人形自身を固定するなどいろいろと小細工をするわけですから、一脚の「機動性」はあまり重要ではないからです。

    三脚用のスタンド

    三脚用のスタンド

     お人形の目線を人間っぽくリアルな高さにしたうえで自立させたい場合は三脚の上に立たせたいので、ホームセンターで 買ってきた金具に針金を取り付けたものを、三脚の雲台に取り付けて使っています。

    雲台の拡大

     先ず針金の金具への取り付けですが、手元にあった何かの余りのボルトに針金を巻きつけ、たまたま合う蝶ナットで締めつけて、付け替えができるようにしています。これを三脚の雲台に取り付けるのですが、カメラ用のネジは1/4インチネジといって近所ではなかなか売っていません。仕方なく、写真用品店で止めネジを買ってきて取りつけます。


    針金のカーブ

     ところでお人形を自立させる針金には、微妙にカーブをつけてあります。これはジェニーの腰から下の曲線に合わせてあり、上手く脚の後ろに隠れるようにするためです。

     尚、写真の針金は先端が尖ったままでお人形のシャツに突っ込むだけの使い方ですが、最近は先端を半円に加工してお人形の腰にはめられるようにしたものを使っています。

    ■テープ類

    マスキングテープ

     お人形と針金などを固定するのに使います。本来は塗装するときに塗り分けるために使う紙製のテープで、模型店やホームセンターで売っています。他のテープに比べ剥がしやすいのが特徴です。

    クラフトテープ

     針金などと、それを支えるもの(地面のアスファルト)を固定するのに使います。セロハンテープは薄くて剥がしづらいですし、ビニールテープは粘着力低く使いづらいので、クラフトテープが使いやすいようです。このくらい粘着力があると、たとえば汚れたアスファルトの地面を「捨てテープ」で2~3度ペタペタして汚れを取り除いただけでくっつけることができます。

     もちろん、テープを貼った跡は糊を残さずキレイに清掃しなければなりませんし、接着力が強いので塗装されているものの場合テープを貼ることで塗装を痛めてしまう可能性があります。アスファルトやコンクリートなどの路面で無い部分(特に塗装してある部分)には、個別に許可を頂かない限り用いないでください。

    両面テープ

     めったに使いませんが、何の補助もなしにドールを立たせる場合や、風が強いときに手すりに座らせる時などに使います。これも同様に、塗装してある場所では塗装を剥がしてしまう恐れがあるので使わないこと。


    ■レフ板

     モデルさんの撮影で大きな反射板を使ってモデルさんを照らしたり、写真屋さんでの撮影で傘のようなものにストロボの光を反射させていることがありますね。この反射板を「レフ板」と言います。お人形などモデルさんを撮るときに影になる部分を反射板で照らして影を打ち消すことで、全体として柔らかい印象にすることができます(詳細は「Vol.2」を読んでください)。

    レフ板

     私は初期はボール紙にアルミ箔と白紙を貼りつけたものを使っていましたが、さすがに使い勝手が悪いので、写真店で、いちばん小さな丸レフ板(\1000ぐらい)を買ってきて使っています。折りたたむとポケットに入るサイズになり便利です。

    ■レリーズ

    レリーズ

     カメラを三脚に取り付けレフ板も使って撮影するとき、カメラをしっかり持てませんから手でブレやすくなります。これを防ぐために、リモートでシャッターを切るレリーズを使います。

     ところで普及型のコンパクトデジカメやスマートフォンではレリーズを取り付ける機構がありません。赤外線のリモコンでもあれば良いのですが、それも無ければ、セルフタイマーで撮影すると良いでしょう。


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